海洋プラスチック問題を考えよう|海が近くても遠くても私たちに出来ること

テレビやSNSで取り上げられることが多くなった、海洋プラスチック問題。ウミガメが漁網に絡まっている写真を最近よく見かける気がします。驚きとともにショックを隠せないですよね。すべては、海洋プラスチック問題が悪化しているせい。

「実際のところ、海洋プラスチック問題がなぜ大ごとになっているのか分からない」という方も多いのが現状。この記事では、海洋プラスチック問題の正体だけでなく、”海洋プラスチック問題を解決するために私たちにできること”も合わせてご紹介しています。

目次

「そもそも、海洋プラスチックって、なに?」

海洋プラスチックとは、海に大量に流されている「プラスチックゴミ」のことを指します。そして、海洋プラスチック問題で欠かせないのが、”1億5000万トン”という数字。1億5000万トンだなんて、想像し難い数ですよね。なんとこの数字、世界中の海に眠っている海洋プラスチックの量なのです。

20の国と招待国、国際機関が集まる”G20サミット”でも、海洋プラスチック問題について話し合われました。テレビやネットでも、海洋プラスチック問題が取り上げられることが増えました。それでも尚、1年で800万トンの海洋プラスチックが海に流れこんでいると言われています。重さで例えるなら、東京タワー2000個分。恐ろしいですね。

5mm以下になった海洋プラスチックを「マイクロプラスチック」と言う

海洋プラスチックと聞くと、何を思い浮かべますか?レジ袋やペットボトル、お弁当のプラスチック容器など。私たちの身近は、便利なプラスチック容器で溢れかえっているので、たくさんのプラスチックゴミが思いつきますね。

目に見えるゴミも海洋プラスチックの一種。ですが、厄介なことに目に見えづらい海洋プラスチックゴミも存在するんです。その名も、「マイクロプラスチック」。5mm以下になった細かいプラスチックゴミが、マイクロプラスチックと呼ばれています。マイクロプラスチックには、2種類あります。

一次マイクロプラスチック

一次マイクロプラスチックは、一言で表すと、プラスチック製品の原料。プラスチック製品を作るのに欠かせない、小さくて細かいプラスチックが”一次マイクロプラスチック”と呼ばれています。

それだけでなく、洗顔料や歯磨き粉、化粧品にも、一次マイクロプラスチックが含まれていることを知っていましたか?最近、大人気の「スクラブ」。毛穴汚れや角質除去をしてくれて、ツルツルになるから使っている人も多いですよね。そのスクラブも、実は一次マイクロプラスチックの仲間。スクラブと合わせて覚えておいて欲しいのが、「マイクロビーズ」。マイクロビーズも一次マイクロプラスチックの仲間です。リップやアイシャドウに含まれている可能性があります。化粧ノリが良くなったり、化粧がよれにくくなるから、配合しているそうです。(もちろん、全ての化粧品に入っているわけではないのですが)

二次マイクロプラスチック

二次マイクロプラスチックは、自然の力で小さくなったプラスチックゴミのことを指します。海に流れ込んでしまったプラスチックゴミは、波や紫外線、熱、風などの自然のパワーによって小さく、細かくバラバラになります。実は、合成繊維のお洋服を洗濯する時にも”二次マイクロプラスチック”が流れているのです。その正体は、ポリエステルやアクリル、ナイロンなどのプラスチック繊維。ポリエステルやアクリルなどから作られたお洋服は、お手頃価格で購入できて、丈夫でしわになりにくいメリットが。その反面、海洋プラスチック問題を悪化させている原因の1つだったなんて信じられないですよね。

それだけでなく、「メラニンスポンジ」も二次マイクロプラスチックに含まれています。100均でも気軽に購入できて、水アカや茶しぶなどのお掃除に便利な白いスポンジのこと。摩擦することによって、マイクロプラスチックとして下水へ流れ混んでしまいます。使っているうちに段々小さくなっていくのには、そう言った理由があったのです。

海洋プラスチック問題で”よくある質問”に答えます!

ここまでで、”海洋プラスチックがどんな正体なのか”を説明してきました!でも、まだまだよく分からない海洋プラスチック問題。海洋プラスチック問題をもっと知ってもらう為に、よくある「なぜ?」の質問に答えていきたいと思います。

「海洋プラスチックって、何が問題なの?」

「海洋プラスチックが海に増え続けるのは確かに大変そう。でも、どうして国際会議で取り上げられるほど大きな問題になっているの?」そんな疑問に答えるべく、海洋プラスチックの問題点を大きく3つに分けて解説します!

①海の生き物に迷惑をかけている

海の生き物は、餌と間違えて海洋プラスチックゴミを食べてしまいます。5割のウミガメ、9割の海鳥が誤飲してしまっています。もちろん、消化はされません。誤飲した海洋プラスチックゴミが胃の中にたまると、お腹がいっぱいだと勘違いしてしまい、餌を食べなくなります。餌を食べなかったら、当たり前ですが衰弱してしまいますよね。マイクロプラスチックも同様に危険。プランクトンだと勘違いして食べてしまったサンゴが、病気になってしまった事もあります。

誤飲だけでなく、海洋プラスチックゴミが身体にくっついてケガをしてしまう事例も。漁師が使う漁網がウミガメの身体に巻き付いている写真は、どこかで見た事があるかもしれません。絡まってしまったら、死んでしまう可能性もあるので、心苦しいところです。人間にとっては、生活が便利になるプラスチック。ですが、海洋プラスチックゴミが原因の1つとなって、絶滅危惧の恐れがある生き物を増やしているのです。

②経済的にマイナス

海洋プラスチックが海に増え続けてしまうと、漁業にも影響が。網にプラスチックゴミが引っかかってしまったり、捕れる魚の量が減少してしまいます。海苔やちりめんじゃこなど、細かい水産物の場合、海洋プラスチックゴミが付着してしまうと取り除く作業が大変。2050年には、魚の数よりも、海洋プラスチックゴミの方が多くなるなんて研究結果も。漁業者の負担は増え続ける一方です。

観光業にも影響は出ています。本来、自然は私たち人間を癒してくれる”綺麗”なもの。海洋プラスチックゴミが岸辺に漂着してしまうと、せっかくの絶景が台無しに。訪れる観光客は、減ってしまうでしょう。岸辺に流れついたプラスチックゴミを回収、処理するのにも、もちろんお金がかかります(負担しているのは市区町村)。海洋プラスチックが増え続けることによって、経済的負担も増えているのです。

③マイクロプラスチックが知らず知らずに私たちの体内へ

マイクロプラスチックを誤飲してしまった魚を、私たち人間は気づかずに食べてしまっていることでしょう。魚だけでなく、塩や飲料水にも含まれているかもしれません。マイクロプラスチックが人体にどう影響があるのかは、まだ不明。ですが、先ほど述べた”サンゴがマイクロプラスチックを食べてしまって病気になってしまった例”もあるので、人間にとっても良い事ではないはず。

人間の身勝手さで増やしてしまった海洋プラスチックゴミが、巡り巡って私たちの体内に入っているかもしれません。

「海から遠い場所に住んでいれば関係ない?」

いいえ、海から遠い場所に住んでいても関係あります。確かに、”ゴーストギア”と呼ばれる漁業で使われる道具(漁網など)も流出しています。その数、年間50万トンから100万トン。しかし、海洋プラスチックゴミの8割は、海ではなく「街」から発生しているのです。

海にポイ捨てされたゴミだけではありません。街でポイ捨てされたプラスチックゴミが、川から海に流出してしまいます。ゴミの埋め立て地などに集められたゴミが雨の力によって、川に流されることもあります。海から遠い場所に住んでいても、海洋プラスチックゴミ問題は他人事ではないのです。

「海に流れたゴミはどこに行くの?」

地球の7割は海。広くて大きい海に流されたゴミは、どうなってしまうのか疑問に思いますよね。海は循環しています。循環することによって、気温や気候を安定化させ、地球を守ってきました。そして、水が循環することによって、プラスチックゴミを処理しています。要するに、海が持つ自然の力によって、プラスチックゴミから守られていたのです。ですが、年々増え続ける一方の海洋プラスチックゴミ。凄い勢いで増えているので、海はキャパオーバー状態。

処理しきれない状態が続き、たくさんの海洋プラスチックが海に漂流しています。細かくバラバラになり、人間の目には見えないマイクロプラスチックとしても海に流れ続けています。

日本で廃棄されたプラスチックはどう処理されているか

日本のプラスチック生産量は、世界第3位。プラスチック容器やプラスチック包装を1人あたりが捨てる量は、世界第2位。驚くべきことに、日本はプラスチック大国と言っても過言ではありません。

もう1つ驚く点があります。それは、日本のリサイクル率は84パーセントだという事。「日本はプラスチック大国だけど、海洋プラスチック問題とは無関係だ」と思えてしまう数字ですよね。でも、深掘りしてみると”半永久的にリサイクルされている割合は、たったの4パーセントなのです。海洋プラスチック問題と無縁とは言えない数値ですよね。

日本は、「マテリアルリサイクル」「ケミカルリサイクル」「サーマルリサイクル」3つのリサイクル方法を行っています。何だか難しい言葉でよくわからないですね。簡単に解説します。

「新しいプラスチックに変身するマテリアルリサイクルってどんな方法?」

日本のプラスチックゴミをリサイクルする際の2割が「マテリアルリサイクル」。マテリアルリサイクルは、廃棄されてしまうプラスチックゴミを集めて、新しいプラスチック商品に大変身させる方法。プラスチックゴミが新たなアイテムに生まれ変わるなんて、環境にとっても優しい!

でも、デメリットがあります。それは、半永久的ではないこと。リサイクルを繰り返すごとに、プラスチックの成分が劣化してしまいます。そうすると、品質が悪くなり、再度マテリアルリサイクルを行うことができなくなってしまうのです。

マテリアルリサイクルのうち15%は海外に輸出している

マテリアルリサイクルを行っている割合には、アジア諸国に輸出しているプラスチックゴミが含まれています。リサイクルを行うには、手間がかかるのでその分”人件費”が必要です。日本では、リサイクルに伴う人件費が高いので捻出することが難しい。そこで、アジア諸国の人件費が安い国に「資源」と言う名目で輸出しています。コストの面で、捨てられてしまうプラスチックを輸入して再利用しなければならないアジア諸国に輸出しているそう。

途上国に押し付けることにより、日本のリサイクル率は高いように見えます。処理体制が整っていない途上国に送り込まれたプラスチックゴミは、処理しきれずに、海洋プラスチック問題を加速させる要因になっているのではないのでしょうか。

「ゴミ発電とも呼ばれているサーマルリサイクルって何?」

リサイクル率の6割を占める、「サーマルリサイクル」。捨てられてしまうプラスチックゴミを”エネルギー”に変身させるリサイクル方法です。捨てられてしまうプラスチックゴミを燃やすことによって生じる「熱」が、火力発電などに使われています。その名も、ゴミ発電。よく燃えるプラスチックゴミは、ゴミ発電にもってこいなのです。

日本では、立派なリサイクルの一種となっているサーマルリサイクル。ですが、海外ではリサイクルに含まれません。リサイクルには、「循環」という意味をもっていて、モノに生まれ変われないから「エネルギー回収」とみなされています。

「日本での割合が1番小さい、ケミカルリサイクルってどんなリサイクル?」

日本では、たったの4パーセントしか行われていない「ケミカルリサイクル」。捨てられてしまうプラスチックゴミを分子レベルまで分解して、新たなプラスチック原料に変身させます。3つのリサイクル方法の中で、1番地球に優しそうに見えますよね。

「もっとケミカルリサイクルを行えば、海洋プラスチック問題が解決しそう!」と感じるかもしれません。ですが、ケミカルリサイクルは、分子に分解するのが大変。たくさんのエネルギーとコストがかかってしまいます。ケミカルリサイクルの割合を増やしたくても、そう簡単には増やせないのです。

【海洋プラスチック問題】その解決のために私たちにできること

「このまま海洋プラスチックが増え続けたら、もっと大変な事になる」「海の生き物の命が脅かされてしまう」「人間の身体にも悪影響かも」と危機感を感じることでしょう。しかし、国が選択しているリサイクル方法などは、個人1人の力ではどうにもなりません。だけど、私たち1人1人が海洋プラスチック問題の解決に向けて、できることがきっとあるはず。

海洋プラスチック問題をこれ以上悪化させないように、できることから始めてみませんか?今すぐできる、海洋プラスチック問題を悪化させない為の解決策をご紹介します。プラスチックを全く使わない、プラスチックフリーな生活を急に始めることは難しいでしょう。1人1人が少しずつ、地球にいい取り組みができたら、海洋プラスチック問題の悪化を防げるかもしれません。

使い捨てのプラスチックをやめてみる

海洋プラスチックごみを「個数」で見てみると、使い捨て容器やペットボトルなど、生活由来のプラスチックゴミが6割を占めています。確かに使い捨てプラスチックは、洗い物の手間も減らしてくれるし、便利。けれど、海洋プラスチック問題を解決するために、使い捨てのプラスチックではなく、環境に優しいものを選んでみましょう。もっと具体的な方法もあわせてご紹介します!

マイボトルを持つ

繰り返し使えるマイボトルに好きな飲み物を入れてお出かけしたら、きっと楽しいはず。いつでも、どこでも、お気に入りの飲み物でホッとひと息つけます。ペットボトル飲料をよく購入する人にとっては、節約になるかも。

また、カフェやコンビニでもマイボトルにコーヒーを淹れてくれるお店が増えました。勇気をだして、「マイボトルに淹れてください」と言えたら、優しい気持ちでコーヒーを楽しめるでしょう。

エコバッグを常に持ち歩く

レジ袋有料化に伴い、多くの人がエコバックを持ち歩くようになりましたね。これは、プラスチックごみ削減に向けた、大きな一歩とも言えるでしょう。ゴミ箱に使うビニール袋は、環境に優しい、生分解性のものを選んでみるとよりエコですよ。

マイカラトリーやマイ箸を持ち歩く

マイカラトリーやマイ箸を持ち歩けば、プラスチックスプーンやフォークを使う必要がなくなります。購入する際は、プラスチック素材ではなく、自然由来の成分で作られたカラトリーやお箸を選んでみて下さい!お気に入りのデザインのものを選べば、洗い物の時間もウキウキした気分になりそう。海洋プラスチックごみ問題を解決するために少しずつ取り入れていきたいですね。

エコなストローやストローを使わない選択をしてみる

紙ストローのお店が増えました。「紙ストローだと飲みづらい」なんて声をよく耳にします。そこで、洗って繰り返し使えるストローを持ち歩くのがおすすめ!ただエコなだけでなく、美味しい温度で飲めるようにと、工夫がつまったストローがいっぱいありますよ。米などの自然由来で作られたストローもおすすめ!プラスチックストローより耐久性は劣りますが、小さなお子さんでも飲みやすいです。

また、ストローを使わずにあえて「直飲み」で飲み物を楽しむという方法もあります。「ストロー必要ないです」と思い切って伝えてみるのも良いですね。

キッチンやバスルームをエコに大変身させよう

毎日の生活に欠かせない、キッチンとバスルーム。プラスチックゴミやマイクロプラスチックを流出させない対策を気軽に取り入れてみませんか?ぜひ参考にしてみてください!

ブラシやスポンジを自然由来のものに替えてみよう

洗い物やお掃除に欠かせない、ブラシやスポンジ。実は、無意識にマイクロプラスチックを流出させちゃっているかも。ウレタンが多く含むスポンジやアクリルたわし、メラニンスポンジを使っている人は要注意。植物性の<strong>「セルローススポンジ」や「へちまスポンジ」</strong>に替えてみると、環境に配慮しながら、お皿をピカピカにできるでしょう。

また、ブラシの多くはポリエステルやナイロンなどのプラスチックで作られています。持ち手からブラシ部分まで、全てが自然素材で作られているブラシを使うのがおすすめ!

使い捨てラップを思い切ってやめてみる

食材を保存する際に、使い捨てラップってとても便利ですよね。毎月1本使用すると、年間で1.8キロものごみになってしまうので、繰り返し使えるものを少しずつ取り入れたいところ。

みつろうラップやシリコン容器、生分解性素材のラップなど、環境に優しいものをチョイスできたら素敵ですね。

マイクロプラスチックを流さない、ボディーソープやシャンプーを選ぶ

マイクロプラスチックの原因となる”スクラブ剤”が含まれているものを控えてみましょう。おすすめは、固形石鹸である「シャンプーバー」。自然素材の成分がグッと濃縮されていて、お肌にも優しい!敏感肌の人でも使いやすいでしょう。

液体ソープを選ぶ場合は、シリコン容器などに入れ替えて、繰り返し使えると良いですね。

海洋プラスチック問題を意識しながら、おしゃれを楽しもう!

海洋プラスチック問題も気になるけど、おしゃれも全力で楽しみたい!流行に敏感なおしゃれさんでも、気軽に取り入れられるアクションをご紹介します。自分らしいファッションやメイクを満喫しながら、環境問題にも配慮できたら素敵ですね。

天然素材で作られた、上質なお洋服を長く愛用しよう

お洋服のタグを見てみると、ポリエステルやアクリルで作られたものばかり。安くて丈夫ですが、洗濯をする際に流れ出るマイクロプラスチックが気になるところ。そこで、オーガニックコットンや麻などの天然素材で作らたお洋服でエシカルファッションを楽しんでみませんか?シンプルだけど、個性もばっちり。ファッショナブルな人も納得するお洋服がたくさんあります。

素材や製法にこだわっているため安価ではありませんが、愛着も湧き、長く大切に着続けることができることでしょう。

エコな歯磨き粉やエコなメイクアイテムで自分を磨こう

歯磨き粉には、汚れを落とすのが得意なスクラブが。メイクアイテムには、化粧ノリを良くしてくれるマイクロビーズが。どちらもマイクロプラスチックの原因に。

綺麗でいるために欠かせない歯磨き粉やメイクアイテムなので使わないわけにはいきません。環境に優しい成分で作られたものに、少しずつでも替えていくと安心して使えますね。

プロキングをはじめてみる

美しいスタイルを維持するには、運動が欠かせません。せっかく運動するなら、環境問題の解決に繋がる「プロキング(plogging)」をはじめてみるのはいかがでしょう?

プロキングとは、ジョギングしながらゴミ拾いをする活動のこと。海外で今、大人気です。住んでいる街が綺麗になることはもちろん、海洋プラスチック問題の解決にも繋がり、体型も維持できるなんて一石二鳥ですね。

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